ダンス教室で、加納身祐希が軽く手を叩き、濃厚な東北なまりの褒め言葉が飛び出した：「这个动作没毛病！（この動作はばっちり！）」バレエレオタードに身を包んだこの日本人教師の中国語は、今や母国語より流暢だ。

　1992年大阪生まれの加納が中国で暮らして10年になる。遼寧バレエ団のリードダンサーから、起業家、妻、6歳の男児の母へと変遷を遂げた。

　「遼寧バレエ団のお姉さんたちの首筋は優雅な白鳥のようで、指先には朝日のような優しさが漂っていた」。2002年冬、10歳の加納は日本のバレエ指導者に帯同され遼寧省瀋陽の遼寧バレエ団を訪問。団員たちの卓越した技術と温かい人柄に触れ、「遼寧に留学し、世界レベルのダンサーから学びたい」と決意した。

　この執念は成長過程を貫いた——全日本Japan Grand Prix青少年部銀賞受賞から米シカゴ・ジョフリー・バレエ学校奨学生を経て、遼寧バレエ団は長い間憧れ続けてきた場所だった。卒業前に指導者から進路について聞かれた際、ふっと頭によぎったのは中国で、即座に「中国に行きたい」と答えた。

　2014年の遼寧バレエ団入団時、最大の壁は言語だった。「聞き取れるのはできたんですけど、やっぱり話す、自分の言いたいことを相手に伝えるというのがすごく難しくて、何度も涙をこぼしました」。バレエ団の先輩たちの手引きで言語を克服し、さらに練習場で同じダンサーである夫と出会った。共通のキャリアが育んだ国際結婚は実を結び、息子の誕生によってやっと瀋陽は「夢を追う場所」から「家」へと昇華した。「最初は中国に来たときはやっぱりバレエの、バレリーナとしての道を歩んできましたが、今では、もう自分の人生を中国で歩んでいっているという感じです」と加納はそう語った。

　2023年、中国永久居住権（五星卡）を取得した加納は「やっと自分の居場所を見つけた」と感じた。医療保険と年金保障による安心を得て老後の不安もなくなったので、友人と共同でダンススタジオを設立し、大人向けバレエ教室で芸術活動を継続している。毎年大阪へ帰省する際、家族に中国での生活を伝えると、親族が電子決済や瀋陽故宮などの話題に「早く訪れたい」と関心を示す。

　バレエ教室において加納は動作指導と同時に、自らを「小卡拉米（中国語俗語で"ごく普通の者"という意味）」と称しつつ、「微力でも真実を伝えたい。日本の良さを中国人に、中国の良さを日本人に知ってもらい、些細なことでも日中友好のために務めていけたら」と述べた。

　「日中友好の基盤は民間交流にあり、小さな積み重ねがその礎となる」。そう語る加納の瞳が静かに輝いた。時は移り、20年余りを経て、あの10歳の少女が抱いたバレエの夢は遼寧の大地にしなやかながらも強靭な根を張り伸ばした——足の先で『二泉映月』の月明かりを点じ、『白鳥の湖』の朝もやを踏みしめ、ついに平凡な日常生活という舞台に深く根を下ろし、静かに育つ二国をつなぐ文化の枝となった。